妥当な人間くん⑤
バーベキュー当日、
駅でおさむさんと待ち合わせた。
今年初めてのバーベキューということもあり、
僕の心は踊る。
おさむさんと話をしながら、
河原へと歩いて向かった。
バーベキューは多くの人で賑わっていた。
主催者はおさむさんの知り合いらしく、
紹介してくれた。
主催者の男は、
見た目が「チャラい」レベルの話ではなかった。
チャラすぎてもう意味わかんなかった。
いや伝わってほしい。
もう、すっっっっっごい、チャラかった。
もう一回言う、
すっっっっっごいチャラかった。
チャラ男に挨拶をすると、
出身を聞いてきて、「ふーん」と言い、
すぐに横の女の子に夢中になっていた。
まじでクソだなぁと思った。
そのチャラ男とは極力関わらないようにしながら、
僕はほかの人とバーベキューを楽しんだ。
バーベキューも終盤にさしかかると、
おさむさんに声をかけられた。
「このあと、俺トークライブやるから、
是非来てほしい!」
おさむさんは、自分がやっている活動や経験を
いろんな人に伝えているらしい。
トークライブってすげぇな、、
おさむさん、さすがだわ、、
僕はこの時、すっかりおさむさんをリスペクトしていた。
バーベキューが解散になり、移動する。
おさむさんと将来の夢について喋りながら、
会場へと向かっていた。
この時、
この時までは、
おさむさんは、俺の中で、
憧れてて、カッコよくて、
すげえ人なんだなぁって
本気で信じてた。
でも、
たった、
その一言が、
たった一言が、
僕に衝撃と、
絶望を味あわせた。
おさむさんは突然立ち止まり、
僕の方を向いて、口を開いた。
「あのさ、」
「ア○ウェイって知ってる?」
その瞬間から、おさむさんが
ただのサルにしか見えなくなった。
どんなに熱い言葉を並べても、
どんなに熱い眼差しで見つめられても、
ただのサルにしか見えなかった。
僕は、騙されていたのか
ずっと騙されていたのか
友達じゃない
商品を買わせるための、ただのカモだったのか
利用するための、カモだったのか
友達でも
他人でもない
騙すのに丁度良い
商品を売っても
縁が切れても
どっちでも良い存在、
『妥当な人間』として見られていたのか
トークライブと言う名の、ア○ウェイのセミナーは、とあるマンションの一室で行われた。
内容は何も入ってこなかった。
途中で聞く時間が勿体無いと感じたので
適当に理由をつけて帰った。
長い3週間だった。
それ以来
彼らとは、一切連絡をとっていない。
(完)